「XJR1200に`94-R1のフロント廻り&リヤホイールをフィッティングして欲しい」
そんなオーダーです。
同時期に他の年式のR1のフロンと廻りをXJR1200に
フィッティングさせるオーダーも入りましたので、
それぞれ個別に写真を撮っておいたのですが、
まとめて工程をアップしてしまいます。
写真が入り混じってしまいますが予めご了承下さい。

 

↑R1のトップブリッジです。
今回はメーターやキーシリンダーステーを製作するわけですが、
年式によってオフセット量やトップブリッジそのものの形状が異なりますので
共通部品として製作する事ができず、
年式ごとのワンオフ製作となりました。



↑R1のトップブリッジを加工するためにわざわざジグから製作します。
単純なハンドルポスト穴開け加工程度であれば問題ないのですが、
キーシリンダー&メーターステーを固定させる座面&ネジ穴加工を行うためには
より正確な位置だしと固定が必要だからです。

↑フライス盤で余分な部分をカットしていきます。

↑左はキーシリンダーの囲いをフライスでカットした後、
ハンドグラインダーで整形したところです。
右はキーシリンダーステーを固定する座面とネジ穴加工を行ったものです。


↑ワンオフのステムシャフトです。
今回はスチール製です。
R1のトップブリッジはXJRに比べて薄型のため、それに対応した設計となります。
ナット類はXJRの物を使用しますが、
その他にトップブリッジをしっかりと固定するためのスペーサーや、
ベアリングナットの上に配置する3mm厚のシムが必要になります。


↑左はスペーサーリングを打ち込んだところです。
右は完成状態。


↑左 ワンオフのメーターステーとキーシリンダーステーです。
バンドソーで切った張ったなんてできません。
きちんとプログラムしてからNCフライスで製作しました。

右 仮組みした状態。

キーシリンダーの位置関係はXJRのノーマルと同等ですが、
倒立によってハンドルの切れ角が変るためそのままではロックできません。
フレームヘッドパイプ側のストッパー穴をハンドルーターで拡大してやればOKです。


↑中央 メーターを仮組みした状態です。
メーターステー上下に振動対策のためのウレタンカラーを仕込んであります。

↑ 次にリヤですね。
ご存知の通りXJRとR1ではアクスルシャフトが異なります。
ベアリング換装では対応できませんのでスペーサーを兼ねたカラーを
検証データーに合わせて製作します。




↑ 問題のチェンラインです。
XJRとR1ではR1の方が外側に○mmのラインになりますが、
R1のスプロケットハブは肉厚が無いためそれほど加工できません。
不足分はマル秘技で対応させます。
(写真のハブは追い込み加工後でこれからスタッドボルトを立てます。)

因みにリヤスプロケットはR1の純正品を使用しなくてはなりません。
これはマル秘作戦に必要不可欠だからです(笑)
しかしXJRとはチェンサイズが異なりますので
フロントに市販の530コンバートスプロケットを採用します。
タイヤのサイズやリヤのスプロケット丁数を数式に当てはめ
フロントの丁数を選択するのは言うまでもありません。


↑ブレンボにどの程度の製動力を求めるかは車両オーナーの考え方次第です。
今回はサポートとトルクロットを製作して対応しました。
サポートのアクスル部はベアリング方式ではなく、
専用カラーを圧入したリジットタイプです。
スイングアームのトルクロット固定部は、元々ノーマルロッドが装着されている
ステーをそのまま流用しました。



↑マル秘作戦でチェンラインは合わせたものの、
そのままではスタッドボルト&ナットがスイングアームチェン引きの溶接部に干渉してしまいます。
スタッドボルトを短くして、薄型のロックナットで対応させましたが、
できればワイヤーロック方式にしてくださいとお願いしました。



↑ R1のフロントフォーク長はXJRに対してかなり短いです。
トップブリッジの厚みが変ることで補えるのは1pそこそこでしょう。
そこで市販のフォーク延長キットの出番です。
延長キットはブラックアルマイト処理しましたのでそれほど違和感がありません。
ただし延長キット使用は自己責任でお願いしております。



↑ワンオフしたメーターステーを利用してノーマルのライトステーも装着です。
ライトステーの下部は若干の溶接加工を施し、R1のアンダーブラケットに対応させました。
ぱっと見はノーマルチックで◎です。

ヘッドパイプ下部の三又ストッパーに関しましては、
少し溶接延長させてやりました。

さてここまでだらだらとレポートしてきましたが、
当店で受け持ったのは加工屋としてあくまで足回りのフィッティングを
できるだけ最善の方法で行ったのみです。
ここからどうセッティングを出して行くのかは車両オーナー次第という事になります。