GT380のフロントブレーを強化して欲しい。
そんなオーダーです。
当店でGT380を取り扱うのは初めてじゃないでしょうか。
どんな個体なのか大変楽しみにしていましたが
入庫されたGT380の状態は素晴らしいコンディションで
キャリパーやローターは純正品をコピーした市販品が新品で組みこまれておりました。
しかし車両オーナー様曰く、何度か調整してもフロントブレーキの効きが甘いので
対抗4ポットピストンを使用して何とか改善して欲しいとの事です。
フォークピッチが狭い旧車で対抗4Pの採用はなかなか難しいのですが
車両をお預かりして仮検証した結果、
ブレンボのキャスティング4Pキャリパーと
サンスターのφ320XJR1200用ローターの組み合わせなら
各部の加工と合わせてギリギリフォーク内に収まりそうだという事で
早速パーツの手配をして設計に取り掛かる事にしました。
(もちろんローターオフセットスペーサーのワンオフやギヤボックスの加工も必要です)
実際に取り掛かると旧車純正品の精度の曖昧さに最後まで悩まされる結果となり
完成まで大変苦労しましたがとても良い勉強にもなりました。
↑入庫時の写真です。
各部メッキ処理されています。
ホースは某メーカー製ですが
フィッティング部からのオイル漏れがするという事で
他メーカー製へ交換する事になりました。
↑納車直前の写真です。
オールペイントされたタンクの色合いが良いのか
ブレンボキャリパーとサンスターのローターを採用しても違和感がなく納まりました。
入庫時にエンジンはO/H済みとの事で
3発のエンジン音はこれまたとても気持ちの良いものでした。
↑写真は右アウターチューブです。
写真に記載した通り、本来は片押し1ポットキャリパーステーが
緑→部分にボルト固定されております。
今回はローターをギリギリまで外にオフセットさせるため
新規キャリパーサポートが納まるスペースが無いため、
緑→面を基準に加工ジグを造り、赤枠面のフライス加工を行いました。
サポートは外側から被せる事になるため
ピンク→のφ8.5ボルト穴にM10-P1.5のネジ山もつけます。
しっかし...
まずこの段階で旧車の強烈な洗礼を受けるハメに...
常識的には緑→面には純正キャリパーが付きますので、
A-B共、面は水平に揃っているはずなのですが、
右フォークはA-Bで0.5mmほど段差がある上に
ローター側面に対して平行が出ていないのです。
しかも左右のフォークでA-Bの厚さもバラバラなら
ボルトピッチも合っていないという状態です。
<困ったちゃんその1>
↓ローターの垂直面(赤→)に対して
キャリパー固定面(緑→)が常識を超えて斜めになる。
→の角度は大げさに示してあります。
<困ったちゃん その2>
↓ローター水平面(赤→)に対してキャリパーが内側に傾く(緑→)
写真は現物合わせで青→面にテーパーをつけて対処済みですが、
これはノーマルのキャリパー取り付け時から発生している現状です。
つまりアウターの精度が悪い。
対抗ピストンの場合はローターセンターとキャリパーセンターのずれは
それほど極端に心配する必要もなく、メーカの新車でも左右で異なるのはザラですし、
上下でずれているものも多くみかけます。
しかしながらそれに輪をかけてキャリパーがローター面に対して傾いているとなると
本来のキャリパーピストンの動きができないため
何度エア抜きを行ってもしっくりこないのです。
今回も仮組の状態で左右上下のセンター出しを行っただけではNG。
青→面にテーパーを付けてネジレをとったところ違和感は一発で解消されました。
ただしネジレていたのは右側のみ
<困ったちゃんその3>
更にフォークエンド部のアクスルシャフトの貫通やシャフトカラー固定クランプの精度がゆるいので、
フロントを浮かせた状態でシャフトナットの本締めを行うのと、
アクスルに負荷をかけて本締めを行うのとでは
見ために判るほどローターとフォークの位置関係に違いがでます。
(とは言ってもミリ単位にはなりませんが)
これでは設計そのものができませんので、
一先ずアクスルに負荷をかけた状態で本締めを行う等のルールーをつくり
それに基づいて設計する事にしました。
まぁ色々とありましたけど完成品は↓
↑出来上がったローターオフセットスペーサーとキャリパーサポートの表と裏面です。
サポートはアウターチューブの個体差に合わせてシムを利用して固定します。
↑ギヤボックスも加工してあります。
そしてスポークとキャリパー内側側面の干渉を避けるため
キャリパーも若干薄くスライスしてペイントしました。
アウターチューブとローターのクリアランスはギリギリですが
フルブレーキングしてフォークがねじれても
干渉はしない設定にはなっております。
それで今回GT380を手掛けてみて改めて思ったのですが
やはり旧車の場合はそれぞれの個体に合わせてパーツの製作をするのが一番ですね。
1データーではとてもオリジナル商品としてラインナップする事は不可能ですし、
今後の物造りのために良い勉強になりました。
という事でせっかくきれいな状態なので写真を追加
ギヤポジションインジケーターが装備されています。
そう言えば私が生まれて初めて買ったGSX250E刀にもついていました。
私のオートバイ歴の最初期は250E刀→FSインパルス→FW400といずれもスズキさんなんですよねぇ..
GT380は当時の漫画の影響で興味を持ちましたが
とても手に入れられませんでした。
ラムエアシステムです。