↑RZVのアクスルシャフトはφ17ですので3GMのφ20に合わせるために
スイングアームの長穴とチェン引きの穴を拡大させます。
(写真はありませんがアーム外側のL字パーツも要加工)
ここで注意事項ですが、
スイングアームの長穴は元々φ17のシャフト対して
R8.5mmで加工されているわけではなく、
直径で1mm程度は大きめの長穴になります。
シャフトはスイングアームの長穴で支えるのではなく、
チェン引きで支えると考えて下さい。
今回はφ20のシャフトに対応させるために
R10.5mmで加工しました。
そしてチェン引きの穴ですが(写真左)
こちらは精度良く穴を開けなくてはいけません。
φ20のシャフトを通すからと言って
20mmの通常ドリルやエンドミルで、
クランプした素材の上からいきなり穴を開けてしまうのはNGです。
ドリリングでは加工中のドリルの振れで
+0.1〜0.3mmほど穴が拡大されてしまいますし、
エンドミルカッターを使用しても
らせん状にカッター目が残った上に穴が拡大してしまいます。
今回はNCフライスで穴の内側から径を拡大させました。
↑3GMのホイールをフィッティングするに当たってもっとも悩んだのが
チェンラインとタイヤの関係、
そしてスプロケットハブをいかにしてアーム内に納めるかでした。
ご存知の通り、3GMのタイヤサイズは180ですので、
RZVのチェンラインでは、チェンが振れた時にタイヤが干渉する恐れがあるわけです。
かと言ってフロントにオフセットスプロットを使用すると
フレームとチェンが干渉します。
やはりチェンラインはRZVのノーマルで行くしかないのか....
メーカーのチェンラインやホイールセンターに関しましては、
個体差による許容範囲という物があるのですが、
今回は過去のデーターと照らし合わせて、
許容範囲内でホイールは若干右へ、
チェンラインは若干左へ移動させてフィッティング加工を行う事にしました。
(チェンとタイヤの干渉をできるだけ避けるため)
そこでまずチェンライ出しの加工ですが、
通常はスプロケットハブの座面追い込みで対応しますが、
今回はスプロットハブごと右へ追い込まないと、
スイングアーム内に収まりません。
そこでかなりアクロバッティーですが、
スプロケハブの内側やインナーカラー、
3GMのホイールハブ部を加工して、スプロケットハブごと右へオフセットさせました。
それでも3GMのスプロケットハブはアーム内に収まりませんので、
ハブベアリング外側のシールを取り除き、
アクスルカラー厚を調整する事で対処しました。
ハブベアリングは両面圧着シールタイプのベアリングですが
今回はスチール製ですので金属部の錆に対しては要注意です。
話が長くなりましたが上のハブの写真で指差している部分は
すべて加工してあります。
ホイール側は加工ごすぐにブラストしてペイントに出してしまいましたので
写真がありません。
↑スプロケットハブごと追い込む作業でもう一つ忘れてはいけないのが
ダンパーの厚み調整です。
今回はホイールに当たる面を手作業でカットして行きました。
これの作業も適当に薄くカットしてはいけません。
アクスルシャフトを締めこんだ時に
ダンパーが適度につぶれるくらいにしたいのです。
とても工賃に見合う作業ではありませんね(笑)
↑さてローター側です。
3GMのブレーキシステムはローターを除いて位置的に使用できませんので
ブレンボのカニキャリパーを使用します。
ワンオフサポートはアクスル部にベアリングの無いリジットタイプです。
スイングアームにトルクロットステーを溶接して
ワンオフのトルクロットと共に固定します。
細部の写真は撮りませんでしたが、
溶接したトルクロットステーの位置決めは悩みました。
ステーを右に寄せるとチャンバーにボルト類が干渉してしまい、
左に寄せるとタイヤに干渉してしまいます。
かと言って後方へもってくると見た目にちょっとかっこ悪い。
ピロボール部の調整でロットはもっと長くなりますので、
サポートの取り付け角度は変えられます。
因みにホイールのローター座面を加工し、
ローターは内側へオフセットしてあります。
それとアクスルカラーの厚み調整でキャリパーサポートと
サポート外側のカラー厚分を確保しているわけです。
(ホイール右のオイルシールはそのまま使用できました)
↑スプロケットはスプリングワッシャーとボタンボルトで固定していますが
本来はIsaのボルトを使用してワイヤーロックするつもりでした。
メーカー欠品で1ヵ月待ってもボルトが入らないので仕方なくこの仕様です。
まだ仮組みですので
アーム外側に取り付けるL字のメッキーパーツ(ワッシャークロー)や
シャフト長を合わせるためのスペーサーカラーは未装着です。
心配したタイヤとチェンの干渉も今の所問題ありませんが、
銘柄によってチェンの幅がことなりますので
幅広チェンの場合は、干渉度が高くなります。
フロントに関しては個々に写真は残しておりませんが
ステムシャフトの交換は必要ありませんでした。
ただし、ストッパーや、トップブリッジ、キーシリンダー、等は
すべて加工しないとフィッティングできません。
カウル内にはきれいに収まりました。
という事でここから先の調整は車両オーナー様によって行われます。
足回りを変更させる事によるメリットやディメリットは
すべて打ち合わせした上で行っておりますが、
今後どのように変わっていくのか楽しみな一台ですね。