そんなオーダーでした。
当店ではGBにNSRをフィッティングされた例がなく、
「車両とパーツをお持込して頂きませんと正確なフィッティングはできません」
とお伝えしたのですが、
車体のお持込はできないとの事ですので、
GBのノーマルパーツとNSRのパーツを送って頂き
できる限りの作業を行う事にしました。
送られてきたパーツとホイール類の写真を撮り忘れましたが、
スイングアームとブレーキ回りは`89のNSRで、
ホイールは17インチの`90移行の物でした。
`89のブレーキ回りはスイングアーム上面に位置しますので、
サスやトルクロットとの干渉が一番心配でしたが、
案の定いろいろと問題点が発覚しました。
↑ スイングアームピポットのパーツです。
上段がNSRのノーマルで下がGB用に製作&取り寄せたパーツ類です。
カワサキのZRXやホンダCB400SFも同じですが、
左右非対称のパーツ構成で、これが本当にやっかいななんです(泣)
送られてきた足回りを検証し、
NSRのスイングアームピポットをどのくらい詰めれば良いか決めますが、
ピポットシャフトの径がGBφ14にたいしてNSRφ15です。
せめてNSRがφ16であればもう少し楽なんですけど...
因みにスイングアームのアーム先端間は
同一車種でもメーカー製造時で数ミリの個体差がでます。
度々書き込む事ですが、
アクスルシャフトのナットを締めこむ再は、
ナット側のアームが内側に入っていくケースが多く、
アーム間の遊びが多い個体と少ない個体では、
ピポットセンターとホイホールセンターが必ずしも同一になりません。
ホイールセンターは同一車種でも微妙なずれを生じますので
その点はご了承下さい。
↑ピポット左のニードルベアリングとインナーカラーです。
GBに合わせてカラー長を決め、内径はφ14に合わせます。
本来は表面に高周波焼き入れが入れてあるとベストなのですが、
色々な事情から比較的硬度の高いスチール材を選択しました。
↑左 ピポット右側です。
まぁ単純に言えば上段のNSRのベアリングの内輪に、
GBのシャフトに合わせるためのスペーサーを圧入して、
右端のカラー厚を調整してスペーサーを打ち込めばOKなのですが、
先に伝えた通りGBとNSRのシャフト径は1mmしか違わず、
肩厚0.5mmの精密級スペーサーなんて当店では製作できません(汗)
せめてシャフト径が2mm違うのであれば上記の方法で済んだと思います。
そこでZRXなどでもよくやる手法ですが、
下段の様にベアリングの外径は同じままで内径を20mmまで大きくした物を採用します。
こうする事でスペーサーの肉厚が確保でき、
加工精度を高める事ができます。
ただし、内径20mmのベアリングでは、
ベアリング厚がノーマルに比べて薄くなりますので、
その分をベアリング間に配置するディスタンスカラー長で補う必要があります。
写真右は内径20mmのベアリングにスペーサーを打ち込んだ状態です。
さらに補足ですが、
ベアリングの内径を変更するという事は、
ベアリング内輪の外径も変わりますので、
ディスタンスカラーの外径もそれに合わせてます。
ベアリング内輪に圧入したスペーサーだけではなく、
ベアリング内輪そのものがきちんとディスタンスカラーに当たる様に
各サイズを設定する事が重要です。
右側のカラーにつきましては、新たに製作しました。
↑ピポットベアリング間のいわゆるディスタンスカラーです。
新たに製作しました。
↑後は加工したパーツ類をセットしていくだけですが、
ここでも注意事項があります。
右側のベアリング厚が変更されていますので
ベアリングをそのまま奥まで圧入してしまうと駄目です。
ベアリング外面に配置するCリングストッパーの位置に合わせて
正確に圧入するのが肝です。
ピポット右側はカラー厚とシール厚で調整してありますので
スイングアーム自体はノン加工です。
(フライイス加工すればもっときれいな表面になります)
スイングアーム左のニードルベアリング側は
幅詰め加工が必要です。
↑さてさて問題のサスマウントですね。
今回はGBのノーマル位置より数センチ後方で、
基本的にNSRのアームの幅に合わせて溶接しました。
溶接の下地の段階でアルマイト剥離と平面出しをするのは言うまでもありませんね。
この状態ではサスがハノ字になりますがご了承済みです。
エンドアイの長い市販サスを使用されるとの事で
スプリングと各パーツの干渉は避けられました。
トルクロットは純正品をお持込になられたのですが、
左右の振りが少なく、タイヤに干渉してしまうため、
ピロボール付きのトルクロットを製作して対応しました。
トルクロットステーはいつもの様にワンオフして溶接です。
さて長々と説明しましたが、
直にパーツを見たことの無い方には判りづらいかと思います。
お客様からは「完璧に取り付けられました」とのご報告を受けましたが、
きっと調整当のご苦労はあったと思います。
それらを含めて何かしらの参考にして頂ければ幸いです。