ヤマハ2ストローク泣き所 
(燃料コック&キャブ)


最近「キャブをO/Hしたのに片排になる」 「アイドリングでストップする」
等のご質問がメールで多く寄せられます。
その都度お答えしておりましたが一先ずHP上にアップしておきます。

「キャブをO/Hしたのに片肺になる」

まず、こうした車両は大抵は走行距離は少ないけど何年も動かさなかったとか、
安く購入してできるだけ自分で手を入れたんだけど、どうしても調子が良くならない
といった例が多いですね。

RZRや1KT、R1Z等は負圧燃料コックを採用しているのは皆さんご存知の通りです。
この負圧コックという奴はコックがON状態でエンジンを始動させると負圧でガソリンが流れ、
エンジンが止まっている時は例えコックがON状態でも流れない構造です。

ところが....

このコックはいわゆる消耗品という奴で放っておくとお漏らしをはじめます。
つまりコックONでエンジンが止まっている場合でもポタポタと漏れてくるわけです。
その漏れたガソリンは当然キャブ内に溜まります。
この時キャブのニードルバルブが正常に機能していれば良いのですが、
メンテナンスの悪いキャブではすでにニードルバルブも劣化していてガソリンを止める事ができません。
(コック内のパーツの交換でなんとかなると思っている方も多いようですが、不可です。
またコックをバラして清掃してもすぐに漏れ出しますので要注意!!)

そして...

漏れたガソリンはキャブを通り越してシリンダー内へ流れ込みます。

すると...

ガソリンは更に二手に分かれて一方はクランクケース内へ入り込み、
もう一方はチャンバーへと流れて行きます。
ここで問題なのはクランクケース内に落ちてタップリと溜まったガソリンです。
ガソリンがベアリング類に必要な油分を洗い流し、
気がつくと空気に触れている部分に錆びを発生させてしまいます。
数年間も放って置かれたエンジンをキックした時、
ジョリっと感じた事はありませんか?
これはシリンダ内に錆びが発生していると共に、
クランクケース内も酷い事になっているケースが多々あります。
(当店にO/Hで持ち込まれるエンジンの多くは、焼きつきより野ざらしで駄目になってしまったパターンです)

さてここで本題に戻りますが...

キャブをきちんとO/Hしたにもかかわらず、また点火系に問題が無いのに片排になる。
そんな時は燃料コックと共にクランクケース内にガソリンが溜まっていないかチェックしましょう。
プラグコードとチャンバーを外してキックを何度かしてみて下さい。
腐ったドス黒いガソリンが吹き上げてきたら要注意です。
こんな状態ではいくらキャブをO/Hしたところでキック一発でプラグはビショビショ。
キャブ調整以前の問題です。

「アイドリングでストップする」

次に特にガソリンが溜まっているわけでもないのに調子が今ひとつ出ない場合ですが、
キャブはしっかりO/Hしましたか?
「キャブをバラして清掃後にまた組み付ける」という事をO/Hと勘違いしている方が多いのですか、
キャブO/H時にニードルバルブとパイロットジェット、その他Oリング等は
確実に新品に交換して下さい。
フロートも交換すればよりベターです。
ニードルバルブの交換についてはオーバーフロー防止のためですが、
なぜパイロットジェット交換をお奨めするか分かります?
実はパイロットジェットは広がりやすく、
#22.5となっていても実際には#30くらいになっている場合が多いのです。
これはTZR50等でも起こります。
これではアイドル調整なんて何度やっても無駄になるだけです。
きちんとパーツを交換してあげてこそのO/Hです。

更に...

Gタンク内もよくチェックしましょう。
純正の燃料コックについているフィルターだけでは細かい錆びを食い止める事はできません。
当店では燃料コックからキャブへつながるホースの間に社外の燃料コックを追加する事を薦めております。

ここまでのまとめです。

1.燃料コックは定期的にチェックして異常があった場合しただちに交換しましょう!!
(社外の燃料コックを追加するのも良い方法ですが
耐久性はかなり短いので定期的に交換して下さい)

2.キャプのO/H時にはニードルバルブ、パイロットジェット、Oリング、できればフロートもセットで交換!!
3.クランクケース内の状態を常に把握できるよう心がけましょう!!
4.備えあれば憂いなし、という事で燃料フィルター(細かいもの)を追加しましょう!!

因みに...

これは最悪の場合のお話ですが、
どんなに完璧なキャブのO/Hをしたつもりでもやはり調子が良くならない場合があります。
過去の例では、ニードルバルブを圧入(といっても手で入れるだけ)する部分の、
キャブ側の内壁が劣化して広がっていた事がありました。
ニードルバルブにはOリングがついて、
ガソリンがバルブ以外から漏れないようになっているのですが、
キャブ側が劣化していてはどうしようもありません。
こんな場合は残念ですがあきらめて下さい。

それからガソリンホース内に錆び等の破片が付着している場合があります。
ホース内は目で見えないため、エアーで吹き飛ばしたと思って安心していると
これがけっこう頑固なのです。
気がつくといつのまにかニードルバルブに付着して
オーバーフローなんて苦い経験もありますので...
Gタンクがあまりに錆びていたものについていたホース類はよくよく清掃するか、
思い切って交換しましょう!!

上記はまずエンジンを始動する前の基本的な作業となりますが、
この後テスト走行を行っても思うように状態が回復しない場合があります。
例えばCDIや配線関連はアイドル状態で正常に機能している様でも
走行中突然不調となる例も多々あり、
テスターで当たり前の検査をしても原因が特定できない時は
パーツを他の物と交換してテストするしかありません。
その他ピックアップコイルの不良、
振動によるアース不良、市販コックやフィルターの不良、
チャンバーの詰まり等いろいろあります。
1KTや2XTの場合は、リザーブに変わる領域でガソリンがキャブに送られなくなり、
走行不能になる例もあります。