以前エンジンのO/H行ったR1Zのオーナー様から
足回りの変更その他もろもろのオーダーを受けておりましたが
この度晴れて納車となりましたのでアップします。

今回のベース車両はR1Zで入庫時にはすでに
フロントに3MAの倒立。
リヤの2XTのアームがかなり車高が下がった状態でフィッティングされていました。
それとロケットカウルとシングルシートも。

んで、ご要望はと言えば...

@リヤに`94TZ250のガルアームをTZのサスと車高調整機能を生かしたまま装着。

Aホイールは当初3XV使用の予定だったと思いますが
17-5.5のTZ用マルケジーニ6本スポークに変更。

Bフロントホイールはリヤのデザインに合わせてアプリリアRSの17-3.5に変更。

Cオイルタンクとバッテリーは当然移設となりますが、
外部に不格好に取り付けない様にした上でスカチューン。

D市販スピードメーターセンサーの取り付け。

その他消耗パーツの交換です。

実は一番初めに足回りのご相談を受けた時に
リヤにガルアームの採用はできれば止めた方が良いと言った記憶があります。
なぜならR1Zの場合、フレームの構造から3XVなどのガルアームを採用すると
適正な車高では
アーム右側「への字」の先端部とシートレールがフルボトム時に
干渉する事が判っていたので
当然TZアームもそうした物理的問題に苦しむ事になるからです。
もっともカスタムの世界は色々な考え方や優先順位がありますので
ケツ上げしてでもとにかく採用したいという事であれば
すべてを否定する事はできませんので
与えられた条件下で最善を尽くすしかありません。

しかし....
アームもさることながら5.5幅のホイールを履かせるという事は、
タイヤは最低でも170-60。
このサイズでフレームの基本骨格をいじらずにチェンラインが確保するには
チェンの選択からスプロケットの選択まで大いに悩む事になります。

すいません前置きがながくなりました(笑)




↑まだチェンやブレーキホースなどが装着されておりませんが
その他完成直後の写真です。

リヤはノーマルに対して45mmほどアップです。

完成に至るまでの工程ですが、
まずはR1ZとTZのリヤ回りの比較検証を行い
チェンラインやアームピポットセンターとホイールセンター、
サスペンションの位置関係等のデーターを揃えて行きます。

その時点ですでに今後問題となる部分が出てくるのですが
何とか対応して行くしかありません。
事前データーを揃えるだけ揃えたら
書無しのフレームを使って仮サスマウントの製作に入ります。
そこでまずは先のデーターを元にアームピポット部の加工に入ります。

  
↑左 TZパーツです。
市販車のアームと違いダストシール等がありませんのでメンテはそれなりの覚悟を持って行って頂きます。

↑右の上はTZのピポットブッシュ。(内径20mm)
右の下は今回使用するピポットブッシュ。(内径16mm)


  

↑左は今回ワンオフしたスペーサーカラーです。
右の写真の様にTZのカラーの内側に入れて使用します。

ではなぜ初めから一体物で製作しないか?
もちろん形状的には製作は可能なのですが、
通常のスチールやステン、または7075材などで製作した場合、
表面に熱処理を加えて硬度を高めた純正品(この場合はTZのカラー)には
強度的に適わず、ベアリングの内輪(ローラー)によってカジリが発生しやすくなってしまうのです。
そのためベアリングの内輪に触れる部分に関しましては、
できるだけ熱処理の入った純正品を使うのが良いと考えております。

   

↑ヒポットも加工して無事に装着完了。
やっと仮マウント製作に入りれます。


   

↑今回使った書無しフレームです。
まずはノーマルマウントを切り取りTZの足回りを取り付けてみます。
我々がベストと考えた位置で仮サスマウントを製作しサスの動きを確かめてみます。
とは言っても限られた予算内で我々個人ショップでできる実験には限りがありますので
その点はご了承くださいませ。


  

↑ 最後のお役目を全うして残骸となった書無しフレームです。
検証を行ってからだいぶ月日が経ちましたのでご覧の通り赤錆だらけです。

↓そしていよいよ本番です。
まずは全バラしてフレーム単体に...



   

↑マウントの製作は店長の仕事です。
最初はやぐらを組む方法でアッパーマウントの製作を考えていましたので
そのつもりで店長に指示を出しました。
ひこで店長はパイプの整形まで入っていたのですが....

スカチューンという車両オーナー様のご要望を考えると
どうもすっきりしないわけですこれが....
そこで店長には申し訳ないのですが急遽仕様変更をお願いし、
↓の仕様でアッパーマウント完成です。


   

↑アンダーマウントはご覧の通り。

次にサスペンションのバネを取り外し、
フルストロークさせた状態で干渉する部分。
そうですシートレール右側の凹加工を行います。
こうした加工を見た目で嫌だという方はそもそもガルアームの採用は止めましょう。
アーム側を凹ます手もありますがそれはそれで潔くなくてカッコ悪いです。
強度の心配をされる方もいるかもしれませんが
単純にフタをしたわけではありませんので見た目よりはるかに頑丈にできました。

   

   


さてさて私TAKUオーナー
指示するばかりで何もしないと思われてはなんなのでここからが私の担当区域となります(笑)


   

↑フロントローターオフセットスペーサーや
ベアリング内輪スペーサーを兼ねたカラーの製作を行いました。
写真は完成後に黒アルマイトした状態です。
このロータースペーサーですがリブ付きで精度は厚み±0.01mmで仕上げました。
厚みが3mmほどなので、10mm厚くらいのスペーサーにくらべると加工にかなり神経を使います。

そしてリヤのスプロケットハブですが、
今回採用するマルケジーニ5.5-17リヤホイールのスプロケット座面より
更に内側にチェンラインを追い込む必要があり、
色々と考えた結果、内径の大きい他車のスプロケットを使用して
ホイールハブ座面より内側に追い込むハブを製作する事にしました。

当初はご予算の都合上単純な円形ハブで考えていたのですが、
設計時に原寸大でプリントしてみたところ、
これがえらくごっつく見えてかっちょ悪い...
そこで外周に少し手を加えて花びら型というかカメさん形状にしました。↓

こういう突然の仕様変更は良くも悪くも自分で製作するから可能なんですね。

   

  

↑チェンは520でも幅の狭いものを選択しました。
細かい写真を残しておりませんが、計算通りタイヤやフレームへの干渉は避けられてホット一息!!


さてさて私の仕事はともかく
店長の仕事はまだまだ続きます。
実はここまで来るまでの間にも余分なフレームのステーを切り取ったり、
配線処理したりとそれはそれは細々した作業が続くわけです。

足回りが組みあがったところで本格的に補器類のフィッティングにかかるわけですが、
実はこれがスイングアームとシートレール干渉問題に次ぐ悩みの種でした。
TZのサスペンションを採用したいという事は
当然オイルタンクやバッテリーのスペースが無くなるという事です。
スカチューンという制約がなければですね、
単純に考えてバッテリーはシングルシートの下へ移し、
オイルタンクは外付けで完了となるわけですが。
外付けオイルタンクのスカチューンでどうなのよ??
ってところが問題なわけですハイ。
つまりかっちょ悪いわけです。

う〜む 何とかシートレール下にオイルタンクとバッテリーを移植できないかなぁ〜
しかもそれなりの容量を確保して....と
店長とあれこれ考えつつ、店内にある中古パーツを見て回ったところ
3XVのオイルタンクがなんか行けそうな形状をしているではありませんか〜
早速フレームに当てがってみると
ステーの製作は必要ですがこれが見事にマッチしております。
よし!! OK〜

と言うふうに検証時には色々な事がありました...




↑写真は中古品で仮組です。
ナンバープレートステー等も現物合わせで製作です。

↓そんでもって下が3XVの新品オイルタンクです。
フレームにボルト固定用のステーを溶接しました。
3XVのオイルタンクは嬉しい事にバッテリーも元々この位置で搭載します。
ただしバッテリーを固定するステーはアルミで製作しました。

CDIはまだ固定されておりません。


   

  

↑ メーターは元々右の写真の様に市販品が取り付けられていました。
現状ではオイルレベル警告灯が点灯しませんので
今後何かしら対策が必要かと思います(今回きオーダ外)


    

↑チャンバーのクリアランスはギリギリですね。

↑今回は車両オーナー様の諸事情もあり一年半くらいはお預かりしましたかねぇ〜
いやもっとかなぁ...
その間にキャブレターはご覧の通りになりましたのでO/H。


という事で無事に納車できてホットしております。
細かいセッティング等色々と課題はあるかもしれませんが
またの機会がありましたらどうぞよろしくお願いいたします!!