だいぶ日数を頂きましたがオーダー頂いた作業が終わり納車しましたので早速アップします。
ことの発端は「RZ用に加工されたTZR250(1KT)のスイングアームに
TZR250R(3XV)の17-4.5ホイールをコンバートできますか?」
というような内容だったと思います。
単純に1KTアームに3XVホイールをフィッティングさせるだけならともかく、
RZ用にチェンライン確保するというのはかなり困難な作業ですが、
まずは実際のパーツを拝見させて頂き検証を行う事にしました。
検証の結果、3XVのホイール自体に加工を行い、
スプロケットハブそのものもワンオフしてNSR250などと同じような固定方法にする事、
そしてフロントにオフセットスプロケットを使用。
キャリパーは1KT純正を無理して使用するのではなく、
ブレンボ等に換装して吊り下げ式にすれば十分対応できる事が判りました。
(と言ってもタイヤはギリギリのサイズとなりますが)
一先ず物理的な問題はクリアできそうですので
現状で分かる範囲でお見積りをお伝えし清くOKを頂きましたので
今度は車両をお持ち込み頂く事にしました。
入庫時の画像は残しておりませんが、
お持ち込み頂いたRZはすでにカスタム仕様となっており、
フロントには3XVの倒立フォーク。
リヤはメーカー不明のワンオフアルミスイングアームがフィッティングされていました。
ただそのスイングアームは部分的に穴が開けられていたり、
車高が必要以上に高かったりと言った具合です。
その他外装のオールペイントやラジエターなども変更されています。
↓の写真は車両オーナー様のご要望に従い
当店で前後足回りの変更を行ったものです。
車両オーナー様も各パーツの製作工程については気になると思いますので個別に紹介して行きます。
まず3XVのホイールの加工ですが、
スプロケットハブ取り付け座面の追い込み加工と
3XV純正ダンパーの幅詰めといった所で、
基本的には3MAに3XVホイールをコンバートさせる時の加工内容と同じなります。
(加工数値は異なりますが...)
この部分は写真無しです。
つぎにワンオフのスプロケットハブについてですが、
↓の写真が完成品です。
3XVはハブの外側にスプロケットを固定しますが、
NSRと同じくハブの内側に固定するタイプにして
ホイールの加工だけでは足りないチェンラインを確保します。
ホイールが3XVですのでハブダンパーは当然3XVの純正を利用しますが、
当初↑の赤枠に使用する特殊ボルト(この部分がダンパーに挿入される)には
NSR純正を取りよせ、3XVダンパーの内径に合わせて加工流用しようと考えていたのですが、
なんとメーカー欠品どころかすでに販売終了との事。
仕方ないので手間はかかりますが市販ボルトとナットを利用して造る事にしました。
↑まずボルトとナットをしっかり溶接します。
↑そしてネジ部を旋盤で掴んで溶接した部分を整形するとこんな具合になります。
↑スプロケットとの間に緩み止めのギザバネワッシャーを入れて固定すればOK。
と 文章で書くのは早いがけっこう時間がかかる作業なんですよ!!
↑で こんな感じで完成です。
ハブベアリングは両面シールタイプでベアリングの外と内側には
それぞれ専用にワンオフしたカラーが配置されます。
※3XVと1KTはアクスルシャフト径が異なりますので
それに対応する事が必要となりますが、今回は説明を省略させて下さい。
↑サポートはブレンボーレーシングキャリパー用にワンオフ、
お持ち込み頂いたアームにはトルクロット固定用のステーが溶接されていましたので、
今回はフローティングタイプではなく、リジットタイプで吊り下げ式となります。
↑完成後はこうなりました。
いや〜 どこもかしこもギリギリのクリアランスです。
一番上の赤枠の部分ですが、
走行中のチェンの遊びで干渉する可能性が高いので内側は凹加工を行っております。
テスト走行では特に問題は発生しておりませんが、
リスク管理は常に十二分に行って頂くという事を前提にしているのは
言うまでもありませんね!!
リヤの作業を進めてから間もなく、
フロントも3XVからなんとYZF-R1に換装したいとのご要望がありました。
こうした足回りの交換につきまして一長一短がある事は
車両オーナー様も十分に承知した上でのご要望ですので
当店としましては全力で応えるまでです。
ご要望としては、
1.R1のアンダーブラケットとフォークはそのまま使用する。
2.トップブリッジはワンオフしてRZのメーターやキーシリンダー、
またXJR400のライトステーを使える様にする。
3.ホイールに関してはリヤに合わせて3XVの純正品を使えるようにする。
4.そして3XVのメーターギヤボックスも使えるようにする。
5.ローター径を拡大する。
こんなところでしょうか。
トップブリッジの製作はまあ良いとして、
R1に比べてアクスルシャフトの径が細い3XVのホイールをどうやって流用するか?
またギヤボックスをどうするか?
またまた検証段階で現実逃避が始まりそうになります(笑)
↑まずはステムシャフトワンオフ。
7075材の貫通タイプです。
↑そしてトップブリッジ、上から見るとチョーシンプル。
しかし裏はきっちり肉貫してあります。
↑困難なのはトップブリッジ本体の製作ではなく、
メーターを固定するステー等(赤枠)の小物のワンオフです。
今回の場合はトップブリッジ下にコワースのセパハンをセットするのが条件ですので、
フォーククランプ部の厚みを考えると、
ストレートにメーターステーを取り付けできません。
そこでトップブリッジ裏には設計段階で左右2個所ずつ、
メーターステー台座となり得るポイントを確保し、
予めボルト穴を開けておきます。
※その部分は肉貫を行わない。
つまりメーターステーはトップブリッジやフォークを仮組してから初めて
現物合わせにて製作して行くわけです。
↑XJRのライトステーはアンダーブラケットとの接合部を新たに造り直してから
ブラストペイント。
↑フレームヘッド下部のストッパーも一旦削り落し、
R1のアンダーブラケットに合わせて造り直します。
赤枠部分は削り落して下地調整した段階です。
このあとTIGを使って新規プレートを溶接して行きます。
RZのセパハン仕様に憧れている人し多いと思いますが、
セパハン仕様の難点は切れ角が確保できないという問題です。
特によく流用される3MAや3XVのフロント周りではほとんど切れ角を確保できず、
セパハンを広げてなんとか乗られている方が多いのではないでしょうか。
実は今回も入庫された時点では3XVのセパハン仕様で切れ角はほとんどありませんでした。
んが..しかし
R1に換装する事でフォークピッチが変更されたせいか
ハンドルを絞り気味にしても予想したよりずっと切れ角が確保できました。
もちろん軽くUターンなんてできませんが、
3XV仕様よりずっと乗りやすくハンドルも絞れるので見た目も良いです。
おっと フロントはこれで終わりではありません。
肝心のホイール換装という課題が....(汗)
↑検証の結果、
3XV-Rのノーマルシャフトは幅的にはR1に流用できる事が判明。
従いまして、ノーマルシャフトを使えるように考えました。
上の赤枠のカラーですが単純なカラーではなく、
3XVのアクスルシャフトに合わせて
内側が段付きで途中からネジを切ってあります。
R1のシャフト固定方法とは全く異なりますので、
このカラーを右フォークのクランプ部にくわえさせる事で
3XVのフォークと同じ状態を作り出すわけです。
何故フォーク右側かと言いますと、
左側はギヤボックス取り付けのために大幅な加工を施すためです。
※このカラーは7075材で完成時は黒アルマイト処理されています。
↑左フォークはギヤボックス取り付けのためにクランプ部の厚みを薄くする必要がありました。
問題はどうやってフォークを正確に薄く加工するかという事です。
そこでまずは赤枠の様なジグを造りました。
フライス盤のテーブルの上にジュラルミンパイプをしっかりと固定した上で、
フォーククランプの内径に合わせて黄枠部分を加工して行きます。
圧入になる一歩手前の精度です。
加工後にフォークを差し込みクランプすると
水平、垂直方向とも±0に収まりました。
↑こんな感じです。
もちろんフォークアウターをダイレクトにクランプしては傷が付きますので、
その辺りも配慮して微調節を行うのは言うまでもありませんが、
上のジグはそのガイド役になるわけです。
↑そし加工内容です。
赤枠が薄くした部分。
黄枠はギヤボックのストッパーを取れ付ける為に
面だしとボルト穴をあけた状態です。
↑さらにギヤギヤボックを仮当てしながら余分な部分を削って行きます。
↑新規に製作したストッパーです。
この辺りは現物合わせです。
↑完成するとこんな状態になるわけです。
そしてすべての加工やパーツ製作が終わりホイールを取り付けると
キャリパーもきっちり収まり問題無し!!
↑ローター径の拡大に対してはキャリパーをオフセットする市販スペーサーで難なくクリア。
↑ハイ 一先ず足回りを装着した状態です。
当初の予定ではこれで終了となるはずでしたが更なる問題が...
入庫時点で他車のサイドスタンドが取り付けられていたのですが、
角度が悪く、ちょっと押しただけでスタンドが外れやすく、
車輪止めがないと不安な状態です。
そこでRZ用のノーマルスタンドに戻す事を提案したのですが、
しっかりしたステンレス製のスタンド(RZ用)が市販されているという事でお持ち込み頂きました。
ですが最初のスタンドを取り外してみて問題発覚。
まずボルト穴が拡大されています。
しかもステーの厚みに合わないスタンドを
電気溶接の部分盛りで無理やり合わせていたせいか、
拡大した穴が楕円に....
その他もろもろ変形していて仮にボルト穴を合わせたとしても
スタンドはグラグラで危険極まりない状態です。
そこで追加料金は発生しますが
当店で修正にとりかかる事になりました。
↑楕円状態の写真は撮り忘れましたが、
スタンドのストッパー部は赤枠の状態でRZ用のスタンドに換装させると
ストッパーの役目を果たしていません。
↑まずは元々溶接されていた部分を取り除いて下地を造り、
正規のボルト径に合わせて製作したスチール製のカラーを
楕円部に入れて溶接して行きます。赤枠
つぎにストッパー部となる黄枠部分にもTIGで盛って行きます。
↑溶接が一通り終わったら整形しペイントをして終了です。
スタンドは見違えるようにしっかりと機能する様になりました。
その他テスト走行を行って気になった部分に手を入れて
無事当店の役目を終わらせる事ができました。
このRZはこれが完成というわけではなく、
いずれエンジンやフレーム等にも手をいれるそうですので
数年後が楽しみですね!!
最後になりますが今回は色々とオーダーを頂きありがとうございました。
またお会いした時には
釣りの話や自転車、猫の話など聞かせてくださいね!!
2009.12 by takuオーナー