2008年の11月ごろに
北海道在住の方より
「ワルキューレのリヤホイールをノーマルの16インチから17インチに換装させたい」
との御相談を受けました。
ワルキューレはシャフトドライブですので
足回りをカスタムすると言ってもかなり厳しい条件になるとは思いましたが、
下準備として各部を採寸したデーターや
流用できそうなパーツを送って頂けるとの事で
お引受けする事にしました。

一番最初はＸ4のホイールで検討したそうですが
ハブ関連の加工が現実的ではないとの事でＮＧ。
次にHD ファットボーイ07年式のＲホイールを送って頂きました。
しかし検証した結果やはりＮＧ。
メールやＴＥＬにて打ち合わせを重ねた結果、
最終的にゲイルスピード　ＺＲＸ１１００　用　Ｃタイプ　ポリッシュホイールを送って頂き、
ボルトオンできる様に加工する事になりました。


↓は完成後に送って頂いた写真です。
バイクも景色もめちゃ美しい〜！！

そして設計に入りましたが、
ゲイルスピードのホイールは一般的なチェンドライブ。
それに対してワルキューレはシャフトドライブでしかも右出し。
ただ取りつけば良いというわけではありませんので
胃が痛くなるほど悩みました。

　　　


↑ワンオフで製作するハブを取り付ける為にホイール側を大胆に加工します。
赤枠の部分には本来ZRXのブレーキローターを取り付けるための塊りがありますが、
フライス盤で削除させた上で内側をボーリングし
新規ハブを取り付けるためのボルトネジ穴加工を行います。
ホイールを機械に固定する際の水平出しが重要でそれなりに時間がかかります。



↑これが今回取り寄せた7075材の塊です。
材料代だけでけっこうな金額になりますので加工中にミスったらシャレになりません。

　　　

↑自分で取り組んだ設計図を信じてまずは旋盤で下加工。

　　　

↑そしてＮＣフライスを駆使して各部の加工を行って完成しました。
赤枠の部分が先に加工したホイールのハブ部へフィットします。

↑中心部にはベアリングが入りますのでそれに合わせた加工精度となっております。
こうした大きな物体を加工する際に気をつけなくてはいけないのは
材料の質や形状によって加工中に歪が発生する事です。
片面のみをいきなりすべて仕上げジグから外したとたんに
予想外の歪で修正不可能という事もありますので
面倒くさくてもそれに対応した加工手順で作業を進めた方が良いかと思います。

　　　
↑左はワルキューレノーマルのパーツです。
純正ダンパーは取り付けられませんので、
ゲイルスピードのダンパーをＷ仕様にして
スペーサーカラー（黄色枠）を製作して対応させます。
このスペーサーカラーは単純なツバ付きではなく、
内側も段付きになっています。

　　　

↑こんな組み合わせとなります。



↑そして出来上がったハブをプレスで圧入後
ダンパーユニットを仮組して設計通りか確認します。

　　　

因みに↑右の写真は裏から見たところですが、
青枠がＺＲＸ本来のスプロケットハブを取り付ける部分です。
一番初めにホイールを加工したと説明しましたが、
ローター側も元々はこんな形状でした（写真撮り忘れ）

この青枠の部分に新規ロータースペーサーが装着されますので
事前に平面出し加工と外周を均一にする加工、
そしてスペーサーを固定するためのボルトネジ穴加工（緑枠）を行っております。



↑そしてこれが新規に製作したロータースペーサーです。

　　　

↑こんな感じで取り付けます。

すべてのパーツを取り付けた所でホイールやローターの振れが
許容範囲に収まっているか確認をしますが心臓が思いっきりドキドキする瞬間です。

↑そして送って頂いた仮組用スイングアームに取り付けて各部の確認！！
ワルキューレは年式によってローター等純正パーツに微妙な違いがあるようですので
各部採寸にも注意が必要です。

　　　

↑次にフロントです。
もうリヤに比べたら天国です（笑）
シャフト径を合わせるためのカラーや
ローターオフセットスペーサーを製作して終了。


↓は完成写真と共に送られてきた写真です。
ちゃんとノーマルのダストカバー（赤枠）が付けられるように設計しましたので
違和感無くフィッティングできていると思います。　

　　　

　　　


さて　ここまで加工内容を紹介してきましたが、
完成したのはすでに数か月前の事です。
今回は完成写真を頂きましたので遅ればせながらアップする事にしました。

車両お持ち込み無しでここまでの作業を行う事ができましたのは
やはり車両オーナー様の下調べやスムーズなパーツの供給、
なによりもこうしたいという明確な情熱があっての事だと実感しております。
その情熱に何とか応える事ができて良かったと今さらながら安堵しております。

UPS-TAKUでは、
作業段取りや技術的な問題を解決しながら
長期お預かりで作業を進めさせて頂いている
他のお客様の車両が数台ありますが、
完成した時にはいずれも喜んで頂けるように努力を続けて行きたいと思います。


↓写真と共に頂いたメッセージです。

こんばんは。

お元気でしょうか？

こちらは一度雪が積もり、バイクはＯＦＦシーズンになりました。

ご報告遅くなりましたが、本年３０００キロ走行し（　私的にかなり走ったつもりですが・・　）

ハードな使い方をしてしまいました。が、概観上・体感上、全く問題なく使用できました。

ダンパーもお気遣いのＷ装着で、全然ショックはありません。

メーター読み２００キロでも、びしっと直進し、コーナーでのぶれ等全く問題ありませんでした。

もちろんノーマルより断然ＧＯＯＤ！です。

最終的にはドラッグ形態になりました。

写真を添付いたします。

機会がございました時にはどうぞよろしくお願いいたします。

本当にお世話いただきありがとうございました。


こちらこありがとうございました。
来年もまた素敵なバイクライフをば！！

2009.11.16 ｔａｋｕオーナー