さてさて 定番の加工を施せば素直にフィッティングできると安心していた1000SFのアームですが、
ホイールセンターやピポットセンターを測定してみると むむむ
「こっこりゃあ〜 一筋縄ではいかないかも...」
という展開になってしまいました。
上の画像は左右が逆になっていますが、加工前のSFのアームピポットです。
左右非対称構造で左がニードルベアリング、
右がボールベアリング仕様。
(繰返しますが画像は左右逆です)
まぁホンダやカワサキでは良くある仕様なのですが、
問題はそのピポット幅です。
10mmや20mmの違いならともかく
750Fに比べて更に幅広でして、しかも本来は削りしろが少ない
左側を多く削らないとホイールセンターが出ない事が判明...
しかし
仮にピポット左側の削り量を抑えた分、右側を多く削り、
右側へ寄ってしまうホイールセンターをサポートやカラー厚の調整で元に戻す事は
物理的に可能だと判り、地獄から天国に一瞬戻されました(笑)
んが...
右側を多く削ると今度はボールベアリングストッパーとなる
Cリングの溝付近まで加工範囲が広がるため、
1000SF本来のピポット構造である、
左ニードル、右ボールベアリングの仕様にできない事も判明(泣)
しかもシャフト径も異なる事から
ノーマルのボールベアリングでの対応も問題あり...
ぐはっ〜
また地獄に舞い戻りか!?
結局色々と悩んだ末に、
どのみちピポットシャフト径も異なるわけだし、
右ボールベアリング仕様がだめなら左と同じくニードルで行くか〜
という事になりました。
つまり、ヤマハやスズキ車に多い仕様です。
では何故はなからニードルベアリング仕様にしなかったかと言いますと、
左ニードルベアリングと右ボールベアリングでは外径が異なり、
ピポットを垂直に立ててボーリングする必要があったからです。
その加工自体が当店の機械では高さが足りず、
アームの固定方法にも難ありでしたので
信頼できる外注先が必要だったからです。
幸い友人の加工屋さんが引き受けてくれましたので
左右ニードル仕様で行く事が決定しました。
上の画像は右ピポットです。
指差している部分がボーリングを施したところです。
その後ニードルベアリングを圧入し、
シーリングストッパーの溝で残った部分を利用してダストシールをつけました。
反対側のピポットはダストシールが付けられませんでしたので、
ニードルベアリング内にシールが付いているタイプのものをチョイスしました。
↑これがピポット内のブッシュ(パイプ)です。
スイングアームに組み込む前にフレームに仮当てしています。
一本物で製作すると精度が出ないためスズキ車などに見られる三分割仕様です。
ベアリング内輪となる左右のブッシュは硬度のある材質で製作されており、
中央ブッシュ(画像 右)は1000SFのものを加工して使いました。
中央ブッシュは内径が若干大きくなりますが、
ディスタンスカラーとしての役目なので
むしろ内径が少し大きいくらいの方がシャフトが入りやすいです。
注意点として、
このブッシュは左右のベアリング間に配置するため
まずどちらかのベアリングを圧入してから次にブッシュを配置、
最後に残ったベアリングを圧入して完了です。
一旦ベアリングを圧入すると単独では抜けなくなります。
またピポット内で必要以上に遊ぶとシャフトが通らなくなりますので、
750Fのピポットブッシュについていた
振れ止めのカラーを左右に取りつけてあります。
(加工は必要ですが丁度良い外径でした また一つは新品取りよせです)
グリスをたっぷり塗布する事!!
↑ フロントに市販のオフセットスプロケットを使用し、
リヤのスプロケットハブは追い込み加工を行います。
スタッドボルトは新品を取り寄せセット完了。
↑ スイングアームピポット部の加工量から、
そのまではホイールが右側によってしまうため、
サポートとアームの間にスペーサーを入れて調整します。
当然スプロケットハブ外側のカラー厚も調整。
そのままではスイングアーム側面に溶接されているストッパー(画像 右)にサポートが
引っかからなくなりますので、溶接で延長させます。
右の画像では溶接部が凹でいる様にみえますが、
これはビートを表に出さないように、
予めV字に溝を作った部分に溶接を施しているためです。
↑ とりあえず仮組みは終了です。
何故かノーマルマフラーが付いていますが、
ノーマルのステップではマスターシリンダー等がアームに完了するため×です。
サスは確かXJR用でエンドアイを延長させています。
そのままでは大きくハノ字になるため、
アッパーマウント側にカラーを配置して、サスを若干外側に降っています。
ここまで検証&加工を進めてきてきましたが、
旧車の場合は特にフレームやスイングアームの精度に大きなバラつきがあるため、
事前に割り出したデーターを元に加工を行っても、
いざ組み付けると一台一台微妙に位置関係が異なる場合が多々あります。
今回も仮組みをした段階で微調整が必要でしたので
ここまでの加工データーは残してありますが、
他のCBにもすべて安定したデーターとして使えるかと言えば答えはN0です。
通販などで加工を行う場合よくよくその辺りの説明が行わないといけないですね!!
↑ステップ&マフラー共市販のものです。
ステップは可変タイプですがこれ以上前に出すとペダルとクラッチカバーが干渉します。
マフラーはチタン性です。
エキパイがセパレートになっていますので
各部の微調整でサイレンサーを外側へ振り出せます。
アームに干渉しない位置で固定して完了(ステーカラーは一部作り直しました)
さてさてやっとフロントです。
拙い文章ですが記憶をたどりながらここまで来るのにけっこう時間がかかります(笑)
ステムは基本的には1000SFの物ですが、
アンダーブラケットにペイントもされていて見た目はかなりきれいです。
ちょっとした調整で750Fにフィッティングできればとの事でしたが、
ノーマルと比べてみると明らかに長く、
アンダーベアリングの下に下駄を噛ませようにも、
ベアリング圧入面にレースが納まらなくなる事から
ステムシャフトをワンオフする事になりました。
↑の画像はすでにワンオフしたシャフトが装着されています。
↑ 左がノーマル、右が1000SFです。
SFのシャフトを引き抜く時に気がついたのですか、
ナットを取り付けるネジ山が、シャフト上部からの圧力により変形して
ナットが回らない状態になっていました。
これはシャフトを引き抜く際にダミーナットを使わず、
直にプレスに当てた場合に起こる典型的なトラブルです。
しかし、何故その様な事になっていたのかこの時点では判らず、
後で大変な事になりました...
因みにこれでは仮にシャフト長が合っていたとしても、
このシャフトを使用するには無理がありますね。
↑ アンダーブラケットのストッパーに合せて、
フレームヘッドパイプ下部左右のストッパーも溶接整形。
順調です。
↑画像では判り辛いですね〜
キーシリンダーロック用のストッパーも整形。
↑ そして〜 問題のメーター&ライトの取り付けでっす。
CB750Fと1000SFではあまりに取り付け位置位置また方法が異なるため考え込みました〜
特に今回はノーマルのライトリムやフォーンプレートを使いたいという
車両オーナー様のご希望ですので悩む悩む(爆)
↑ 1000SFのトップブリッジに元々あるステーは全く役に立ちませんでした。
メーターに干渉する場合は切除も考えましたが何とかかわせました。
で、新規メーターステーですが、
まずはフォーク径と予め検証したデーターを元にベースとなるクランプを作成。
クランプ部は出来上がってみるといつものメータークランプに見えますが、
この一セットを造る為だけにジグの製作やNCフライスの段取りで相当な時間が必要です。
そのクランプに合せて現物あわせでステーを造ります。
当初はアルミブロックから削り出そうと思いましたが、
構造的に難しく、スチールカラーとロッドを溶接して対応しました。
(その後 ライトリムと一緒にブラストペイント)
↑画像だと判り辛いですが実車は自然に各パーツがフィッティングできたと思います。
↑ノーマルライトステーは当然そのままでは流用できませんので、
各部の加工(溶接含む)を施しアンダーステーにセット。
ノーマルのフォーンセクションも無事にフィッティング完了!!
ウインカーステーは市販のものです。
↑後もう少しで完成というところでトラブル発生。
何気にハンドルを切ったらアンダーステム側のストッパーにクラックが〜
げげげっ〜 まさに青天の霹靂とはこの事かぁ〜
実は当店でもCB1000SFのストッパー構造を良く理解しておらず、
画像の様に中央に1本ではなく、本来は左右に2本仕様だったという事をこの時初めて知りました(大汗)
ではこのステムは一体何者かと申しますと。
1000SFは間違いないのですが、
どうやらCBX1000用に加工されたものを購入されたそうです。
左右のノーマルストッパーを削り落とし、
中央にアルミのブロック材を溶接してからペイントを施してあったわけです。
しかし、溶接ビートがきれいに整形されてペイントしてありましたので
てっきりノーマルのままだと思っていました。
(鋳造のストッパーは溶接ビートがありませんので)
溶着が甘い上にビートを整形してあるので
ちょっとした衝撃でご覧の通りとなったわけです。
先に紹介したステムシャフトのネジ山変形も、
このストッパーを製作する際に一度シャフトを引き抜いたと思われますが、
その際に起こったのは間違いないでしょう。
ここまできて車両オーナー様共々がっくりですが、
現状でトラブったのが不幸中の幸いと見るべきでしょうか...
ステムなどのアルミ鋳造品は元々溶接性はかなり悪いです。
と言いますか、溶接する事自体を前提にしていないはずです。
鋳造後の素材変化も良く判らないですし、
プロの金型溶接屋さんでも嫌がられる場合があります。
表面上だけで中身が溶着されない場合があるので
実際に使用してトラぶっても責任が持てないというわけです。
そこで当店でもステムに関してはできるだけボルト止めを行いますが、
すべてがボルト止めできるわけではありませんので
溶接する場合の危険性を改めて認識させられました。
↑という事で今回は一先ずこれで一旦作業終了です。
次回フロントを再度バラしてステムストッパーの新規製作を行っていよいよ完成です。
ハイそれでは続き再開です。
↑ 問題のストッパーです。
車体から取り外してちょっと力を入れたらポロっと落ちました(汗)
表面だけで溶着されていないですね。
↑ 一旦平面出しをしてボルト固定に切り替えました。
↑ 完成しました。
やはりかっこ良いです。
<外装&キャブの仕様変更しました>