「CBX1000にCB400SFのスイングアームとCB1300SFのホイール、
そしてCB1300SFの三又をフィッティングさせて欲しい」
そんなオーダーでした。
実車持込無しの通信加工で、完全な加工データーがあるわけではなく、
仮に装着できても実際の走行ではどの様な挙動を示すか判らない点や、
アクスルシャフトやピッポットシャフト径の違いによる
ディメリット等をご説明した上でそれでもやってみたいとのご希望でしたので、
当店でお引き受けする事にしました。


↑ストッパーの加工等はお客様側で行うとの事でしたので、
当店ではステムシャフトのワンオフ製作と圧入を行いました。
写真左のアンダーブラケットには、すでに新規シャフトを圧入してあります。
中央のシャフトがCB1300SFの物で右がCBX1000です。
CBX1000ではアッパーベアリング上のナットがシングルですが、
シングルで設計するとトップブリッジが固定できなくなりますので、
今回はCB1300SF仕様のダブルナット方式としました。

ここから↓はリヤ

今回は位置出しに相当苦しみました。
元々データーがあれば良いのですが、
車種が特別なだけに全くデーターがありません。
送って頂いたパーツはCB400SFのホイールも含めたリヤ回り一式と、
CB1300SFのホイール廻り、
そしてCBX1000のスイングアームとピポット廻りのみです。

まず400SFのホイールセンターとピポットセンターの位置関係を割り出し、
1300SFのホイールデーターをPC上で打ち込んで行きます。
そして各パーツの加工数値やカラーサイズを割り出し、
1300SFのホイールを400SFのスイングアームにフィッティングできるか検討します。

次にCBX1000のノーマルスイングアームのピポットセンターと
ホイールセンターの位置関係を検証を検証し、
CBX1000のスイングアームピポットより幅広い
400SFのピポット部の加工数値を決定するわけですが、
いかせん今回はCBX1000の検証用ホイールが無いため四苦八苦です。
過去の経験をフルに使ってデーター取りを行い、
CB400SFのピポットカラーの加工数値を割り出します。
ただし、どんなに丹念に検証を繰り返しても、
チェンラインを含め+,-0という事はありませんので、
最善を尽くすと言うしかありません。


↑ 写真上のシャフトはCBX1000の物です。

400SFと同径かと思ったら何と1mm細い。
CBX1000がφ14、400SFがφ15です。
これがヤマハのTZR系の様に単純にピポットベアリングの中に
パイプが通してあるだけであればどうにでもなるのですが、
400SFのピポットは、左側にシャフトの外径と同径の内径を持った
ボールベアリングが2個圧入させており、
このベアリング内径をCBX1000のシャフト径に合わせると、
今度は外径が合わなくなります。
(写真中段のセットがCBX1000の物)
かと言って肉厚0.5mmの精密級スペーサーなんて製作できませんので、
どうしようかと考えた挙句、
外径が同一で内径の大きいベアリングを採用し、
スペーサーを製作しやすくして対応する事にしました。
(写真下段セット)
ただし、ベアリングの厚みが薄くなるため、
その分を補うために中央のディスタンスカラー長を延長させ、
新規ベアリングに合う様、カラーエンド形状も変更させました。

ピポット右はニードルベアリング1個で、
内輪として独立したカラーを持っておりますので、
こちらはCBX1000のシャフト外径に合わせたカラーを製作して対応します。



↑ 左ピボット部です。
指差している部分と反対側の厚みが異なるのは、
メーカーでのスイングアーム製作時に、
溶接の歪でピポットパイプ部が若干ハの字になった所へ
凹加工をして行くからです。
これはどのメーカーのスイングアームでも大抵一緒です。
今回の場合はアームそのものの幅詰めは行いませんので関係ありませんが、
スイングアームピポット自体の幅詰めを行う場合は、
つねにこの歪分を考えて加工しないと行けません。


↑左写真の指差した部分にスナップリングワッシャーが入ります。
今回はベアリングの厚みが異なりますので、
正確に打ち込まなくてはなりません。



キャリパーの選択も悩みました。
1300SF/400SFどちらのノーマルキャリパー&サポートも流用できません。
ブレンボのカニキャリパーもホイールと干渉して×。
結局ヤマハ純正のブレンボキャリパーを加工して流用する事にしました。

アクスルシャフト径も全く異なりますので、
アクスルカラー、ディスタンスカラー、サポート、トルクロットすべてワンオフです。

リヤスプロケット座面も追い込み、ワイヤーロックして終了です。



  

↑いよいよドキドキの仮組みです。
キズを付けないためにガムテープで保護して組み付けます。



↑ そして出荷直前の一枚です。
この後実車に取り付けてどうなるのか一番不安になる時ですが...


↓ 早速写真が送られてきてホット息です。




最近はこういったオーダーが全国から寄せられてくるのですが、
時間が無くてすべてをHPにアップする事ができません。
今回は当店では珍しい車種がフィッティングベースという事もあり、
こうしてアップさせて頂きましたが、
写真を送って頂いてもアップする事のできなかった皆様には
大変申し訳なく思っております。
そして感謝の気持を忘れずにこれからも頑張って行きますので
何卒よろしくお願いいたします!!